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ハトラコピー(HATRA)の2017年秋冬コレクションでは、「出雲重機」という架空の企業を主役に置いた。
「出雲重機」は、デザイナーの大久保淳二が「近未来の都市部に働くロボット」をコンセプトにスタートしたアートプロジェクトの一環である。会社のコーポレーコピートカラーコピーはエンジ色。それは、今シーズンの服を見れば一目でわかることである。特にアウターやハトラコピーの代名詞的存在であるパーカーは、きちんとロゴまで施したデザインで、あたかも実在するかのような主張の仕方である。
前回は隠すことへの多様性を見出したハトラコピーであったが、今回はというと隠す手法をまた異なる角度で表現してる。例えば、今までは縦のラインを強調する丈長のトップスやワンピースが多かったが、今シーズンは平均的に丈感が短め。洋服を着て肌を覆い隠すことは同じだが、トップスとボトムスの組み合わせ方を再考したり、ただ、ひとつのアイテムで完結するスタイルではなく何かを組み合わせるスタイルの提案を新たに登場させている。
テキスタイルの中で目立ったのは、幾何学的模様のキルティング加工が施されたもの。絶妙な硬質感があるテクスチャーに、いびつな丸が規則的に並ぶテキスタイルはそれ単体で無機的な化学反応を起こしている。ボアという温かみのある素材も、ハトラコピーの世界ではその表情を失い、どこかケミカライズな印象。通常はカジュアルの定番といえるワッフル素材はシルケット加工が施され、上品な姿へと変容した。
新しいものを取り入れているとはいえ、ハトラコピーらしいシルエットはやはりパーカーから作られる。襟高のパーカーは、“いつも通り”顔を覆い隠すほどデフォルメされている。また、数シーズン前から定番化してきたスリットの遊びも大胆で、中には一枚布を前と後ろに垂らしたような形があるのも面白い。それもまた新たな隠す手段として取り入れられており、ハトラコピーの世界にうまくミックスされている。
架空の会社が示す不思議な空間と、ハトラコピーらしい無機的な空間の組み合わせは、新たなバーチャル世界として表現されているように思う。デジタル化の進んだ現代社会の仮想世界における人々のあり方、そしてその中でハトラコピーが追い続ける「居心地のいい服」の模索なのではないかと想像してしまう。