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ノワール ケイ ニノミヤコピー(noir kei ninomiya)の2021年春夏コレクションが、2020年10月19日(月)、東京・南青山にて発表された。
力強い“明るさ”へ──
暗闇に沈んだ空間に、ジャラ、ジャラ......と、無機的で軽快な音が響く。東京で発表された今季のノワール ケイ ニノミヤコピー、最初に登場したのは、漆黒のビーズが木の実よろしく数多と連なるドレスだ。身体はむしろ露わで、歩みに合わせて揺らめくビーズが織りなすその表情は、どこか虚ろですらある。また、拡大した布地さながらにチューブが波打つドレスも、表皮から乖離した曖昧なシルエットを生み出す。
漆黒のドレス
続くドレスは、黒を基調にフリルをあしらい、暗く沈んだゴシックの雰囲気を漂わせる。スカート部分には透け感のある繊細なテキスタイルを使用し、歩みに合わせて軽やかに揺らめくさまは優美である。他方で、裾から垂れ下がるビーズのチェーンからは退廃が強く匂いたつ。また、レザー調素材で作られたトップスは身体をきつく抑え込んでいるようであり、マットな質感ながらもある種のフェティシズムを覗かせている。
リボンを数多とあしらって
身体を抑え込む──、そのモチーフはリボンから構築されたウェアへと変奏される。なるほどリボンは甘く可憐な装飾モチーフであるが、きゅっと結びつけることで身体を抑え込むこともできるのだ。スリーコピーブ部分を消去し、腕を外に露わにすることも叶わぬドレスは、締め付けられたようなトップスから裾にかけて不穏にAラインを描くとともに、豊かに咲き誇るリボンやラッフルでもって、顔までも埋め尽くしている。
また、網目状のニットは柔らかな表情を生み出すものの、どこか果物を包むネットのようにして身体を覆わんとしている。他方で、ふわりと風に揺れるようなオーガンザは淡いピンク色に染まり、気分は明るげだ。ピンクの色合いや数多とあしらわれたリボンはたしかに甘く明るい雰囲気を漂わせるものの、ウェア一面を覆い尽くすその執拗さは、ほとんど祈りのそれに近くも感じられる。
幻想的な明るさ
拘束と装飾というリボンが有する両義性が、コレクションを陰鬱さから明るさへと反転させる要石として作用しているようにも思われる。この“明るさ”。今季のコレクションでは、パリと変わらない姿勢を貫きながらもポジティヴなエネルギーを表現したかったとデザイナーの二宮啓は語る。いわゆるガーリーコピーとでもいえるような、たっぷりのフリルやリボンが甘く揺らめくピンクのジャケットやドレスは、ほとんどオプティミスティックとまでいえる明るさの幻想的な表れだろう。
軽快に揺らめく透明なビーズ
また今季は、新素材を開発するというより、コットンやウールなどの身近にあるものを駆使することを意識したという。軽快にきらめくビーズ素材もその一例なのかもしれない。クリスタルのように透明なビーズから構築したブルゾンやスカートは、花のようなモチーフをつなぎ合わせることで、独特の陰影を孕んで豊かな表情を生み出している。そして最後に登場したルックには、咲き乱れる花のようにビーズが揺らめき、まだまだ見る者を明るい幻想へと誘ってやまないのであった。