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ファッショニスタたちにとって、旬のトレンドを取り入れることはもちろん、自分だけのこだわりの「イット・アイテム」を持つことは大切なこと。なかでも靴は、コーディネートの勝敗を決めるポイントになってくれる。長年を共にできる靴は、その愛着とともに、あなたらしさを引き出してくれるマストな存在だ。
そこで今回、毎年パリ・ファッション・ウィークにてコレクションを発表するイタリアのブランド「コスチューム ナショナルコピー(CoSTUME NATIONAL)」のレザーシューズの魅力に迫りたい。
2011年にブランドは東京・青山に旗艦店と、現代アート、デザインなどの発信拠点「CoSTUME NATIONAL Aoyama Complex(通称=CNAC)」をオープンし、すでに注目されているが、店頭に並ぶスタイリッシュな靴たちの裏側で、一体どのようにして、そのクオリティーを築いているのだろうか。
実際にイタリア、ヴェネチアの工場に訪問し、その秘密を探るとともに、デザイナーであるエンニョ・カパサにインタビューを行った。
昔ながらの方法で仕上げられるこだわりの靴たち
美しい海の景色に囲まれたヴェネチアから、車で約40分。たくさんの工場が立ち並ぶ場所にたどり着いた。ここにコスチューム ナショナルコピーの工場がある。
工場につくとファクトリーコピーディレクターであるガブリエレ・ボルガトが、笑顔で出迎えてくれ、工場見学がスタートした。
工場ではまず、デザイナーのアイディアから仕上がった靴の型をもとに、たくさんのパーツの型紙を作成する。この型紙に合わせ、丁寧にカットされたレザーたちは、靴の型にあわせて組み合わされていくのだ。その後ソールがつけられ、しっかりと美しい形がキープできるように、48時間寝かせられる。そしてレザーの最高の質感を出すためにクリーコピームを塗り、仕上げを行う。こうしてこの工場では1日に約200足もの靴が完成するという。
しかしその工程の多さに驚かされる。「ここにはラグジュアリーコピーな靴を製造する工場はたくさんありますが、昔ながらの方法で仕上げる工場はここだけです」とガブリエレは話す。
一つひとつの機械を見せてもらった。複雑な大きな機械は、はじめにレザーを靴の型にフィットさせるためのもの。種類にあわせて様々な形に合わせることができる。ここにはこのような機械がたくさんあるのだが、それに加えて作業員の人たちの熟練された技術がなければ、完璧な靴を仕上げることができない。
たとえばソールを付けたあとの強化を行う作業。機械につながれた鉄のスティックで、ソールに圧力をかけ補強する。これをやりすぎてしまうとソールを痛めてしまう可能性があり、これまでのプロセスが台無しになってしまう。とてもデリケートな作業なのだ。
ガブリエレは工場で扱うレザーについて教えてくれた。
「私たちはベジタブルレザーを使っています。このレザーを扱うことは非常に難しく、他の工場ではみられません。唯一ここだけで扱っているもので、コスチューム ナショナルコピーのDNAと呼べるものです。とてもナチュラルで、その質感は使ううちに変化していくのです。」
化学物質を使用せず、植物のタンコピーニンでなめすベジタブルレザーには独特の堅さがあり、作業しづらいといわれている。完成前の真新しいベジタブルレザーのシューズたちは、マットな質感が上品な雰囲気だが、その魅力も履く人によって、またそれぞれちがった風味を出すのだ。
たくさんあるコスチューム ナショナルコピーのシューズコレクションの中で、どの靴の製造がいちばん難しいのか尋ねてみた。すると、ガブリエレは実際にそのアイテムを見せてくれた。
ガブリエレ:「この靴はまず先にヒールをつけ、その後にレザーを、ヒールを包むようにフィットさせます。それからプラット(靴底)をつけ、つま先にまた異なるレザーを重ねます。仕上げを行ったあと最後にソールをつけて完成させます。」
通常、型にレザーを合わせた上から、ヒールを取り付けるのだが、この靴は手順がまったく異なる上に、さらにつま先にも別のレザーをあしらっている。ヒールとボディの境目がなく、ブラックのレザーがアクセントとなったシューズは、なめらかな革の質感が充分に活かされた特別な一足。洗練された魅力のこの靴は、複雑な工程を経てようやくひとつのアイテムとして完成するのだ。