記事お勧め
ニューヨークコピー・マンハッタンコピーの南部に位置するSOHOは、活気あふれるエリアだ。そこのワンブロックを占める大きなビルのワンフロアに、ステラ石井が立ち上げたショールーム「The News Inc.」はオフィスを構えている。アレキサンダー ワンコピー、3.1 フィリップ リムコピー、バンドオブアウトサイダーズをはじめとする数多くのブランドがここから羽ばたいてき、sacaiの海外事業も成功させてたことでも知られている。多くのブランドと仕事をしてきたステラからブランドのインキュベーションと、デザイナーが成功するために必要なことについて話を伺った。
The News Inc.の行っているショールームとはどのようなビジネスの形態でしょうか?
ショールームはブランドを預かり、バイヤーやメディアに紹介してビジネスに育てていくのが役割です。 欧米では ショールームがビジネスとして根付いていて、小さな会社もたくさんあります。日本では大きな商社が似たような役割を担っていますね。The News Inc.では特に若手ブランドのインキュベーションに力をいれています。
ショールームは、エージェントとして、またはディストリビューターとしての機能があります。基本的に、アメリカにベースがある場合はエージェントとして仕事をします。オーダー受けて卸売りしてコミッションを貰います。
ディストリビューターの場合は、ブランドにもっと関わり、私たちでアメリカ国内の需要をまとめて、私たちのお金で買い付けしてそれをアメリカで販売する。海外ブランドをアメリカで売れるように仕掛けていきます。
The News Inc.のニューヨークコピーのオフィス内
The News Inc.を立ち上げ、若手ブランドに注力したきっかけは何だったのでしょうか?
もともと日本のコム デ ギャルソンコピーで働いた後、メゾン マルタンコピー マンジェラやヴィヴィアン・ウエストウッドコピーをアメリカ市場にPR・営業する仕事をしていました。そしてアメリカで仕事をしているうちに、自然とアメリカの小さくて素敵なブランド達が目に入ってきて、その魅力に惹かれました。彼らが抱いている夢を掴むのを助けたいと思ったことがきっかけです。
左) メゾン マルタンコピー マンジェラ 2013-14秋冬コレクション
右) ヴィヴィアン・ウエストウッドコピー レッドレーコピーベル 2013-14秋冬コレクション
大きな有名ブランドを扱うのと、生まれたてのブランドを扱うのは違いますか?
そうですね。例えば、たくさんのデザイナーと仕事をしてきた中でも、マルジェラもヴィヴィアンも才能あふれる素敵なデザイナーでした。それに加えて、組織もしっかりしていて、生産体制も万全だったから、ビジネスを前に前に進めることができました。
それに対して、立ち上げたばかりのブランドは、決して大きな体制ではありません。立ち上げのころなんて、デザイナーが1人でデザインして、ファブリックを探して、生産工場を訪ねる。ファブリックだってたくさん買えないから、少しでも安く工夫して手に入れている。そういう情熱をもって一生懸命制作している人と二人三脚で夢を形にしていくのには違った喜びがあります。
実際に、デザイナー・ブランドとはどのように関わっていますか?
立ち上げ時にはノウハウがないので、経理や出荷などのオペレーコピーションを手伝うことも大事な役割です。時にはデザイナーへのコーチコピーングも行います。大きなブランドは組織があって、フィードバックをもらえる機会が多くありますが、少人数で行っている新しいブランドではそのような機会がなかなかありません。
デザイナーは頭の中に思い描いていることがたくさんあります。でも時々現実から外れているときがあるので、そういう時にバランスをとってあげる。かといってビジネスに持っていきすぎるとブランドの良さが消えてしまうので、こうすればうまく行くという方程式があるわけではないのです。
なるほど。立ち上がりの際には、貴重な役割を担うのですね。最近の話しを1つ教えて頂けますか?
私たちが取り扱っているティム コペンズ(Tim Coppens)というブランドがあります。彼はラルフ ローレンコピーのRLXのチーフデザイナーを務める傍らプライベートな時間を割いて、誰に言われるでもなく、こつこつと制作を行っていました。
ルックブックまで作っていて、それを見たのが彼との出会いでした。
まだ誰にも見せていないとのことだったので、プロフェッショナルな視点からのフィードバックがもらいたいと思って、バーニーズ ニューヨークコピーのメンズバイヤーとの面会をセッティングしました。
先ほどおっしゃっていたフィードバックの機会を設けたのですね。
ポジティブなフィードバックは頂きましたが、その時は買い付けの時期も終わっていたので、ビジネスに進むまではいきませんでした。
ところが会社に戻ると思いもよらないメールが来ていました。バイヤーから予算を探してみるから、少量だけども購入したいと。そしてその週の終わりにはオーダーが来ました。見せるだけのつもりが、トントン拍子にビジネスが進みました。ティムも自信がついたのでしょう。そこでラルフローレンを辞め、次のコレクションを成功させました。
左) ティム コペンズ 2013-14秋冬コレクション
右) デザイナーのティム コペンズ
夢のある話ですね。これもファッション業界の特徴ですよね。
そうですね。ビジネスの中でも“aesthetics(美しさ)”を売っているファッションは夢があると思います。デザイナーもバイヤーもみんな夢のある方たち。その人の直感や、洋服の美しさには、ビジネスの枠に収まらない何かがある。このビジネスの素敵な一面だと思います。