記事お勧め
2013年10月17日(水)、ヨシオクボコピー(yoshio kubo)が2014年春夏コレクションを発表した。
今季、ヨシオクボコピーはスペインは南部に位置するアンダルシアの地に光を当てた。「服から空気感や匂いを感じてほしい。それにアンダルシア限定のファッションってのが無いなと思って作ってみた。この地を選んだのは、3度ほど訪れたことがあって、好きってことと、なんとなく面白いんじゃないかと思ったから」とデザイナーの久保嘉男。前回トレンド路線を前面に押し出し過ぎたことを悔いた、と自ら言うようにその反動としても、今回は意識せず自分の好きなものを作ったということだろう。
かといって、"そのまんまスペイン"な表現が多いわけではない。マタドール(闘牛士)の衣装を思わせる肩にポイントを付けたタンコピークトップの他は、どちらかといえばマリンテイストでさわやかな印象を受ける。アイテムとしては、ひねりを加えた進化系テーラードジャケットが多数登場。特に袖への果敢なアプローチが目に付く。袖口にリブを付けた所からはじまって、肩からもう一枚布を重ねたことで2枚ジャケットを羽織ってるかのように見せる、キザでトリッキーな仕様。ばらばらに区切られたヨットに用いるクロコピース生地を繋ぎ合わせて袖を作ると、繋ぎ目にわずかにシャーリングができる。それを利用して軽やかな空気感や動きが表現されていると同時に、男のしっかりと力強い腕を強調しているかのような効果も感じられた。
後半は、プリントでクライマックコピースへと攻め込む。ハワイのアロハシャツならぬ「スパニッシュアロハ」という久保オリジナルのウェアを生み出した。花々やオリーコピーブの木、カモメといったモチーフで構成され、せめて気持ちだけでも情熱に満ちた、あの異国の地へと連れて行ってくれるような期待を掻き立てる。それでも、ヴィンテージライクに仕上げていることで、地に足ついた大人の男のウェアであり続ける。
ショー序盤の演出もエンターテイメント性に富んでいた。突如、華やかなフラメンコの衣装を纏った女性たちが入場。その手に恭しく持たれたのはカスタネットではなく香水瓶。会場にさわやかなオレンジの香りを振り撒き、まず嗅覚から観客をコレクションの世界観へと誘っていく。そして哀愁漂うギターの音色に合わせて踊るは一人の男性フラメンコダンサー。その踊りは一般的な女性のフラメンコよりも激しく、熱く、怒りに似たような感情さえも匂わせる。そんな情景をバックに、モデルたちは皆、髪をぴったりとサイドに撫でつけて口元にはひげをはやし、危うさと情熱の入り混じったスペイン男児になりきっていた。
「10年経って、本気のつもりだったが何気なくやってた部分があった。改めてファッションに向き合いたいと思った。音楽も含め自分の雰囲気を変えようと思った」今後の展開について具体的に聞くことはできなかったが、10年経っても新しい挑戦をして見せる、探求心や向上意欲が今後の発展を物語っている。