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ユリウスコピー(JULIUS)は、2020-21年秋冬メンズコレクションを発表した。
人類の歴史や記憶を渡り歩くノマド
仏教において「苦」を表す“ドゥッカ(DUKKHA)”をテーマにした今季は、無数の凄惨な歴史を経て紡がれてきた人類の歴史や記憶に焦点を当てる。イメージしたのは、辿ってきた歴史を俯瞰しながら調和を求め、記憶を渡り歩いていく遊牧民族。険しい土地を経由しながら、豊穣な土地を求めて彷徨う民族をコレクションに重ね合わせている。
また、記憶をモチーフとして制作を行うマグダレーコピーナ・アヴァカノビッチやクリスチャン・ボルタンコピースキー、ヨーゼフ・クーデルカの作品からも着想を得ている。
粗野なファブリック
印象的なのは、時の経過を感じさせる粗野なファブリック。土のような色味のウールコートやニット、粗い節目のあるリネンのジャケット、ピリングのカーディガンなど、プリミティブで退廃的な表情のウェアが並ぶ。様々な編地を組み合わせたロングニットやニットパンツは砂嵐のような模様を織り成し、褪せたようなエスニック柄のパンツや、ゴワゴワした硬さのあるアウターは吹きさらしの土地を連想させる。
厳しさから身を守る重ね着・身を隠す衣服
長い時間をかけて厳しい環境を歩いていくための重ね着や、身を“隠す”デザインも注目したいポイント。頭や首には無造作にストールを巻き、ジャケットの中にしまうようにしてショルダーバッグを提げるなど、外気や外部のものから身を守るような装いが見て取れる。不均一なストライプジャカード地のシャツとパンツは、雲った背景に溶け込むようにして馴染み、布地を多くとって極端な造形に仕上げたサルエルパンツやワイドパンツは、身体の輪郭を覆い隠している。
分量感のあるオーバーシルエットのアウター
中に何枚も服を重ねられるように、アウターはゆったりとしたボリュームのものが散見された。足首にかかるくらいのロング丈に仕立てたニットガウンは、大きく肩をドロップさせ、下に重心を置いた1着。後ろに向かって流れるようなドレーコピープを描きながら、身体を丸ごと包み込む。
後ろ裾をねじり、メビウスの輪のようなシルエットに仕立てた変形ロングコートもまた、空気を含むようなオーバーシルエットのアウター。裾の部分を下ろさずに、襟に掛けるようにして着ると、分量感のあるショートコートになる。個性的な造形でありながら、着用すると身体の造形に矛盾せず、むしろ身体に馴染むようにしてフィットしている。